本レンズに対応する主要なコードワードおよびコードナンバーは以下の通りである。
- 1931 | ELMAR | – (List Photo 1 K engl.)
- 1932 | Elmarkup | – (List Photo No. 7210)
- 1932 | ELMARKUP | 35691 (Supplement to Pamphlets Nos. 1204 and 1205)
- 1933 | Elmarchrom | – (Liste Photo Nr. 7325.)
- 1935 | ELMARKUP | 50,320 (Booklet No. 1227-3rd Edition)
- 1935 | ELMAR-CHROM | 50,330 (Booklet No. 1227-3rd Edition)
- 1935 | Elmar chrom | – (Liste Photo Nr. 7333 c)
- 1939 | ELMAR | 65,620 (BOOKLET No. 1275)
- 1948 | ELMCO | 65,622 (No. 1348)
- 1949 | ELMAR-B | 65,622 (No. 1348[改訂版])
- 1959 | ELMAR | 11,010 (NO. 1397-R4)
1931年:初期仕様と表記の差異
1931年1月の日本語カタログ(Liste: Leica 31/1)では「標準鏡玉「エルマア」 1:3,5 F=50mm」と表記されている。コードワードはELMAR、価格は80.00円である。同年11月の欧州向けカタログ(List Photo 1 K engl.)では「Leitz “Elmar” Anastigmatic lens F/3.5, 5 cm focus with helical focusing mount」と表記され、コードワードはElmarと小文字表記となっている。
1932年:距離計連動化
1932年5月の欧州向けカタログ(List Photo No. 7210)では表記が「Standard Lens “Elmar” F/3.5, 5 cm. focus, with mount for automatic coupling」となり、距離計連動機構が導入されたことが読み取れる。ここでのコードワードはElmarkupである。ここでの「kup」はドイツ語の機械的連動機構を意味するKupplungに由来すると考えられる。同年6月の米国向けパンフレット(Supplement to Pamphlets Nos. 1204 and 1205)では「LEITZ Anastigmat ELMAR, 50mm focus, F:3.5 (standard lens) in focusing mount」と表記されている。コードワードはELMARKUP、コードナンバーは35691である。価格は36.50ドルであった。
1933年:クローム仕上げの登場
1933年6月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7325.)ではクローム仕上げが登場する。標準仕様(ニッケル仕上げ)は「„ELMAR“ 5 cm 1 : 3,5 Universal-Objektiv für alle Gebiete der Amateur-Photographie, Standard-Objektiv, Fassung versenkbar.」と表記される。ここでの「Fassung versenkbar」は沈胴式を意味する。コードワードはElmarkupである。クローム仕上げは「Verchromt」と表記され、コードワードはElmarchromである。価格はそれぞれ75RM(ライヒスマルク)と77RMであった。現在の中古市場ではニッケル仕上げの方がやや高価であるが、発売当時はクローム仕上げの方が僅かに高価であった。
1934–1935年:コードワード体系の整理と地域差
1934年12月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7325 b.)では標準仕様(ニッケル仕上げ)のコードワードがElmarとなった。クローム仕上げはElmar chromである。一方、翌年3月の米国向けカタログ(Booklet No. 1227-3rd Edition)では標準仕様(ニッケル仕上げ)はELMARKUP、クローム仕上げはELMAR-CHROMと、国や地域によって販売政策の差があったことがうかがえる。米国向けカタログではコードナンバーも記載されており、標準仕様(ニッケル仕上げ)が50,320、クローム仕上げが50,330である。価格はそれぞれ49.50ドルと51.75ドルで、ここでもクローム仕上げの方が僅かに高価である。
1935年9月の米国向けカタログ(Booklet No. 1244)では「LEITZ Anastigmat ELMAR, 50mm focus, f:3.5 (standard lens), angle of view 48°, in focusing mount」と表記されている。記載されているのは一点のみで、コードワードはELMAR、コードナンバーは50,320である。カタログには仕様(仕上げ)に関する記述は確認できないが、コードナンバーからはニッケル仕上げに対応するものと考えられる。ただし、1933年にクローム仕上げが発売されており、1935年時点でニッケル仕上げのみがカタログに掲載されていたとは考えにくい。同年12月のドイツ向けカタログ(Liste Photo Nr. 7333 c)でも、標準仕様(ニッケル仕上げ)はElmar、verchromter(クローム仕上げ)はElmar chromのコードワードで併売されており、米国向けカタログのコードワードELMARがニッケル仕上げなのか、それともクローム仕上げなのかをカタログの記述のみで特定することは困難であるが、クローム仕上げである可能性が高く、コードワードおよびコードナンバーがそのまま引き継がれたと考えられる。
1936年:クローム仕上げへの完全移行とニッケル仕様の終息
ニッケル仕上げに関するカタログへの記載が確認できる範囲で最後となるのは、1936年8月のドイツ語カタログ(Liste Photo 4 K d.)である。表記は「Leitz-Elmar 5 cm 1 : 3,5. Standard-Objektiv und Universalobjektiv für alle Gebiete der Amateurphotographie, versenkbar (siehe auch Beschreibung der Leica unter „Optik“ Seite 9). Bildwinkel 47°; Gewicht 115 g」であるが、価格欄には「Wird nur noch verchromt geliefert.」と記載されている。これは「今後はクローム仕上げのみで供給される」という意味であり、ニッケル仕上げは形式上は残存するものの、実質的に終売となったことが読み取れる。従来の標準仕様(ニッケル仕上げ)のコードワードはElmar、クローム仕上げ(Verchromte Ausführung)のコードワードはElmar chromである。価格はクローム仕上げのみに付されており、67ギルダー75セント(67.75Hfl.)である。
1939年:戦前最終期の仕様
1939年3月の米国向けカタログ(BOOKLET No. 1275)では「LEITZ Anastigmat ELMAR, 50mm focus, f :3.5, (standard lens), angle of view 48°, minimum focusing distance 3.5 ft., in collapsible focusing mount」と表記されている。コードワードはELMAR、コードナンバーは65,620である。価格は48.00ドルである。
1948–1949年:コーティング化とコード体系の再編
戦後、Elmar 50mm f/3,5が確認できる範囲で最初にカタログに掲載されるのは、1948年11月の米国向けカタログ(No. 1348)である。ここでは「Elmar 50mm., F:3.5 Lens, coated, for Leica Cameras」と表記されている。コードワードはELMCO、コードナンバーは65,622である。翌1949年9月の米国向けカタログ(No. 1348[改訂版])では「Elmar 50mm., F:3.5 Lens, coated, for Leica Cameras」と表記され、コードワードはELMAR-B、コードナンバーは変わらず65,622である。カタログの記述より、コーティング仕様となったことが確認できる。
1959年:最終掲載
確認できる範囲では最後にカタログに掲載されたのは、1959年4月のアメリカ向けカタログ(NO. 1397-R4)である。表記は「50mm Elmar f/3.5」のみである。コードワードはELMAR、コードナンバーは11,010、価格は51.00ドルである。1954年のライカM3発売以降にElmar 50mm f/3,5はデザインの変更を受けたが、そのことが確認できるカタログを見つけることはできなかった。今後、パンフレットの整理を行う予定であり、その過程で新たな知見が得られる可能性がある。