本レンズに対応する主要なコードワードおよびコードナンバーは以下の通りである。
- 1932 | Elangkup | – (List Photo No. 7210)
- 1932 | ELANGKUP | 35088 (Supplement to Pamphlets Nos. 1204 and 1205)
- 1933 | Elangkup | – (Liste Photo Nr. 7325.)
- 1933 | Elangchrom | – (Liste Photo Nr. 7325.)
- 1934 | Elang | – (Liste Photo Nr. 7325 b.)
- 1935 | ELANG | 50,410 (Booklet No. 1227-3rd Edition)
- 1939 | ELANG | 65,670 (BOOKLET No. 1275)
- 1948 | ELNIM | 65,671 (No. 1348)
- 1949 | ELANG-B | 65,671 (No. 1348[改訂版])
- 1949 | ELANG-CHROM-B | 65,671a (No. 1348[改訂版])
- 1951 | ELANG | – (I/51/8000 o. Pr.)
- 1953 | ELANG | 11,030 (No. 1382)
- 1961 | ELANG | 11730 U (E450/3706)
- 1965 | – | 11 730 U (Not Listed in Catalog)
1932年:登場期の仕様と距離計連動化
確認できる範囲で最初にElmar 90mm f/4が掲載されたカタログは、1932年5月の欧州向けカタログ(List Photo No. 7210)である。表記は「Distance Lens “Elmar” F/4.9, 9 cm. focus, with mount for automatic coupling」となっているが、F/4の誤植である可能性が高い。コードワードはElangkupである。このカタログのタイトルは『LEICA MODEL II with automatic focusing.』であり、またレンズ表記からも距離計連動であることが読み取れる。同年6月のアメリカ向けパンフレット(Supplement to Pamphlets Nos. 1204 and 1205)では「LEITZ Anastigmat ELMAR, 90mm focus, F:4 (medium telephoto lens) in focusing mount」と表記されている。コードワードはELANGKUPと大文字表記である。コードナンバーは35088、価格は51.00ドルである。
カタログでの表記は国や地域によって特色があり、同年11月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7244 a)では「„Elmar“ 9 cm 1 : 4 (lichtstarkes Fernobjektiv für alle Zwecke der Fernphotographie, wie Landschaft, auch für Architektur, Porträts, Tieraufnahmen)」と、米国向けカタログと比べると、用途を並べる説明文としての傾向が強い。日本語では「あらゆる遠距離撮影用途に適した明るい望遠レンズであり、風景撮影、建築、ポートレート、動物撮影などに用いることができる」という内容となる。
1933年:用途説明の展開とクローム仕上げの登場
1933年6月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7325.)ではクローム仕上げが登場する。まず、通常仕様(ニッケル仕上げ)の表記は「„ELMAR“ 9 cm 1 : 4 Lichtstarkes Fernobjektiv für alle Zwecke der Fernphotographie wie Landschaft, Architektur- und Tieraufnahmen sowie auch Porträts.」である。日本語では「遠距離撮影のあらゆる用途に適した明るい望遠レンズであり、風景、建築や動物の撮影、さらにはポートレートにも使用できる」という内容であり、用途の広い万能型の中望遠レンズとして位置づけられている。クローム仕様は「Verchromt」と簡潔に表記されるのみである。コードワードは通常仕様(ニッケル仕上げ)がElangkup、クローム仕上げがElangchromである。価格は通常仕様が105RM(ライヒスマルク)、クローム仕上げが106RMである。戦前のライカレンズ全般に見られる傾向として、ニッケル仕上げよりクローム仕上げの方が高い価格設定となっている。
1933年10月の欧州向けカタログ(List Photo No. 2 K, en.)では「Elmar F/4, 9 cm. focus. Long-focus large-aperture lens for all purposes of long-distance photography, notably landscape, architecture, portraits and animal studies; Angle 27°; weight 12 ozs.; relative magnification as compared with the standard lens, 1.8 times」と表記されている。日本語では「エルマー F4、焦点距離9cm。遠距離撮影全般に適した大口径の望遠レンズで、特に風景、建築、ポートレート、動物撮影に適する。画角27°、重量12オンス、標準レンズに対して約1.8倍の倍率を持つ」となり、性能と用途の提示がより具体的になっている。また、クローム仕上げは「Chromium-plated instead of nickel finish」と具体的に表記されており、クローム仕上げの導入初期段階であることがうかがえる内容である。コードワードは標準仕様がElangkup、クローム仕上げがElangchromである。
1934-1935年:クローム仕上げへの移行過程
1934年12月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7325 b.)では「„ELMAR“ 9 cm 1 : 4 Lichtstarkes Fernobjektiv für alle Zwecke der Fernphotographie wie Landschaft, Architektur- und Tieraufnahmen sowie auch Porträts. Skala verchromt.」と表記されている。日本語では「エルマー」9cm F4。遠距離撮影全般に適した明るい望遠レンズであり、風景、建築や動物の撮影、さらにはポートレートにも使用できる。距離目盛はクローム仕上げであるという内容である。コードワードはElang、価格は105RMである。このカタログへのElmar 90mm f/4の記載はこれ限りであり、ニッケル仕上げからクローム仕上げへの移行過程にあったことがうかがえる。これに対し、1935年3月の米国向けカタログ(Booklet No. 1227-3rd Edition)では「LEITZ Anastigmat ELMAR, 90mm focus, f:4, (medium telephoto lens) in focusing mount (chrome finish)」と表記されている。コードワードはELANG、コードナンバーは50,410である。価格は83.50ドルとなった。米国向けカタログでもクローム仕上げのみが記載されている。
1935年12月のドイツ語カタログ(Liste Photo Nr. 7333 c)には次の一文がある。「Diese Objektive werden ausschließlich schwarz lackiert, jedoch mit verchromter Entfernungsskala geliefert.」。日本語では「本レンズは黒塗装仕上げのみとし、距離目盛はクローム仕上げで供給される」という内容である。
1939年:戦前最終仕様
確認できる範囲では、戦前最後のカタログ掲載は1939年3月の米国向けカタログ(BOOKLET No. 1275)である。表記は「LEITZ Anastigmat ELMAR, 90mm focus, f :4, (speedy distance lens), angle of view 27°, minimum focusing distance 3.5 ft., in focusing mount」である。コードワードはELANG、コードナンバーは65,670となった。価格は75.00ドルである。
1948年:戦後再登場とコーティング化
戦後、Elmar 90mm f/4が最初に確認できるのは、1948年11月の米国向けカタログ(No. 1348)である。ここでは「Elmar 90mm., F:4 Lens, coated, for Leica Cameras」と表記されており、コーティング仕様になったことが確認できる。コードワードはELNIM、コードナンバーは65,671である。価格は155.40ドルである。このカタログのタイトルは『CONFIDENTIAL PRICE LIST FOR Leica FRANCHISED DEALERS』のため、「Net Price to Authorized Leica Dealers」や「Excise Tax」の記載もある。前者は88.80ドル、後者は22.20ドルとされている。
1949-1951年:仕様統一とコード体系の整理
1949年9月の米国向けカタログ(No. 1348[改訂版])では「Elmar 90mm., F:4 Lens, coated, for Leica Cameras」と「Chrome, Elmar 90mm., F:4 Lens, coated, for Leica Cameras」の記載がある。前者は標準仕様(黒塗装仕上げと考えられる)、後者はクローム仕上げ(オールクローム)と考えられる。コードワードはそれぞれELANG-BとELANG-CHROM-Bであり、コードナンバーは65,671と65,671aである。翌1950年10月の米国向けカタログ(No. 1364)では「Elmar 90mm. f/4, chrome, coated lens」とクローム仕上げ(オールクローム)のみ記載されており、移行期間は比較的短かったとみられる。さらに、翌1951年1月の欧州向けカタログ(I/51/8000 o. Pr.)では「ELMAR f/4 90 mm. long focus lens in coupling mount, angle of view 27°, chromium plated」と表記され、コードワードはELANGへと簡潔化された。
1953-1965年:コード体系の再編と終売
1953年6月の米国向けカタログ(No. 1382)では「Elmar 90mm, f/4, long focus lens, in light weight focusing mount, angle of view 27°」と表記されている。コードワードはELANG、コードナンバーは11,030となった。価格は98.00ドルである。1961年9月の欧州向けプライスリスト(E450/3706)ではコードナンバーが変更され、11730 Uとなった。
Elmar 90mm f/4は戦前から戦後にかけての長い期間に製造されたレンズであるが、最後にカタログへの掲載が確認できるのは1965年6月の欧州向けプライスリスト(Not Listed in Catalog)である。ここでは「90mm f/4 Elmar, screw-thread」と簡潔に表記されている。コードワードは記載無し、コードナンバーは11 730 Uである。価格欄には「Discontinued」と表記されており、市場への供給が終了したことが確認できる。なお、このプライスリストにおけるスクリューマウントレンズの掲載は本項目のみであり、当該時期におけるスクリューマウント系の終息段階を示すものと考えられる。