月: 2026年6月

  • 浅沼商會本店『時の流れ』 第七巻 第一號 昭和9年 (1934年)

    浅沼商会は浅沼タイムスや各種目録と並んで、このような冊子も発行していました。この号は第一面が「ライカ・肖像」であり、木村伊兵衛について、その肖像写真とライカによる人物写真を論じています。従来の営業写真様式は社会に倦怠を感じられている。「形の再現ではなく、生きた人間の姿が求められている」、そう言います。「生命の躍動する肖像写真、つまり動きのある瞬間の固定は、ライカの如き取扱ひに自由の利く精密カメラに依らざれば、到底不可能なことである。殊にライカに許された最明のレンズ、全正色性の高感度フイルムの使用は、ライカの恐るべき機能に一段の協力をして、従来不可能事とされた撮影も可能ならしめたのである」。

    正直に言うと、浅沼商会、売る気満々だなと思いました。ただ、この時代、小型、高速シャッター、高性能レンズ、それと36枚撮りという特徴を持つライカは、多くの写真家に新たなインスピレーションを与えたのだろうなということは想像するに難くありません。

    • 浅沼商会 時の流れ 1934年
  • Leica PRICE LIST –SCHMIDT & CO., LTD. (November, 1937.)

    まだまだ整理していないライカの資料がたくさんあります。その中から、一冊引っ張り出してみました。これは上海シュミットのプライスリストで1937年11月発行のものです。表紙には「STANDARD PHOTO SUPPLY CO, 445 NANKING ROAD, SHANGHAI 冠龍照相材料行」とのハンコが押してあります。カタログコードは記載されておらず、最終ページの下部には「November, 1937.」と書かれています。

    掲載されている主な製品は次の通りです。

    • Leica Model II, shutter speeds 1/20th-1/500th sec. enamelled black,
      with spool chamber, with Standard lens Leitz “Elmar” F/3.5, 5 cm.
      with coupling and interchangeable mount and Ever-Ready Case
      Lykup Esnar … C.S.$ 400.00

    • Leica Model II, shutter speeds 1/20th-1/500th sec.
      with spool chamber, all nickel and black enamelled metal parts chromium plated,
      with Standard lens Leitz “Elmar”, chromium plated and Ever-Ready case
      Lykup chrom Esnar … C.S.$ 420.00

    • Leica Model III, shutter speeds 1/1-1/500th sec. black enamelled,
      with spool chamber, with Standard lens Leitz “Elmar”F/3.5, 5 cm.
      with coupling and interchangeable mount and Ever-Ready case
      Lymar Esnar … C.S.$ 480.00

    • Leica Model III, shutter speeds 1/1-1/500th sec.,
      with spool chamber, all metal parts chromium plated,
      with Standard lens Leitz “Elmar”, chromium plated and Ever-Ready case
      Lymar chrom Esnar … C.S.$ 500.00

    • Leica Model III, Shutter Speeds 1/1-1/500th sec.
      enamelled black, with ultra-rapid lens Leitz “Summer” F/2, 5 cm.
      with spool chamber and Ever-Ready Case
      Lysum Esfus … C.S.$ 650.00

    • Leica Model III an Lysum,
      but with all nickel and black enamelled parts chromium plated
      Lysum chrom Esfus … C.S.$ 670.00

    • Leica Model IIIa, shutter speeds 1/1-1/1000th sec., chromium plated,
      with spool chamber, with Leitz “Summer” lens F/2, 5 cm. and Ever-Ready case
      Lioon Esfus … C.S.$ 700.00

    • The same camera, but with Leitz “Elmar” lens F/3.5, 5 cm.
      Leoor Esnar … C.S.$ 530.00

    興味を持ったのはレンズの表記です。”Elmar”F/3.5, 5 cm.と表記されています。おそらく、日本(シュミット商店)では「F/3,5, 50 mm」という表記になりそうです。5 cmは50 mmに、F値の小数点はカンマになりそうです。ライツ・ロンドンでは「F/3.5, 5 cm」、ライツ・ヴェッツラーでは「F/3,5, 5 cm」、ライツ・ニューヨークでは「F/3.5, 50 mm」と、このように表記されるのではないかと思います。そういう意味では、上海シュミットはライツ・ロンドンと同系統の表記になっているなぁ、とおぼろげに思いました。(“Summer” はカタログの表記をそのまま転記しています。)

    • Leica PRICE LIST November 1937 SHANGHAI SCHMIDT
    • Leica PRICE LIST November 1937 SHANGHAI SCHMIDT
    • Leica PRICE LIST November 1937 SHANGHAI SCHMIDT
  • Pamphlet No. 1216 (E. LEITZ, INC.) U-7-33-M

    仕事から帰ってきてポストを見たら、海外からの封筒がふたつ入っていました。そのうちのひとつがこれです。1933年の米国市場向けパンフレット「Pamphlet No. 1216」です。このパンフレットの興味深い点は、SUMUSKUPやHEKONKUPというお馴染みのコードワードの他に、コードナンバーも記載されているところでしょう。これまでの調査ではこの時期のカタログにはコードナンバーが振られていたものは無かったので、これは私にとっては新発見です。

    それとですが、1933年時点ではニッケルとクロームが両方とも掲載されていてもおかしくはないのですが、このパンフレットでは沈胴式のニッケル、固定鏡胴のニッケル、このふたつしか掲載されていません。ということは、クローム仕様はこの時点では米国には供給されていなかった可能性があります。

    昨日は仕事で浅草に行ってきたのですが、そこで同業者の方たちとお話をしていて、昔のカメラ界隈は「実際にどうだったのか」についての話になりました。35mmフィルムの一眼レフの世界初は、Kine-ExaktaかSportか。これを二次資料や伝聞ではなく、当時の資料を集めて研究し答えを出した人がいるということでした。

    弊ウェブサイトでも、どなたかが研究して出版した書籍や雑誌等は用いず、もっぱら当時のカタログやパンフレット、プライスリストを世界中から買い集めて、ライカのコードワードの歴史を再構築しようとしています。同業者さんには「〜さん、すごい情熱ですね!」と言われたのですが、どちらかと言えば、私は35度9分くらいの熱量しかない人間だと思って生きてきました。齢48になって、自分は他の人からみたら十分高熱なのかもしれないなぁと思いつつ、昨日は久しぶりに生きている気持ちがしました。

    • Pamphlet No. 1216 U-7-33-M
    • Pamphlet No. 1216 U-7-33-M
  • 浅草の人形焼とThe AMATEUR PHOTOGRAPHER(August 1925)

    仕事で毎月1-2度、浅草に行きます。

    たいていは銀座線で向かい、雷門近くの地下鉄出口から地上に出ます。今日は、そこの観音通りというアーケードで海外から来たと思われる着物の女の子たち4人から声をかけられ、短いインタビューを受けました。

    Q.どこから来ましたか?
    A.中野から来ました(私)

    Q.今日はなにを食べますか?
    A.ええとね、そこの富士そばで食べてきました。もりそば(私)

    Q.今日はなにをしにきましたか?
    A.仕事だね(私)

    Q.なにを買ってかえりますか?
    A.え?何を買うって、人形焼かな。浅草人形焼、わかる???(私)

    最後にインタビュアーの女の子と一緒に記念写真を撮られました。

    それから今日の浅草での仕事を済ませ、帰り際に人形焼を2袋買いました。ひとつは職場に、もうひとつは自分で食べる用です。いつも行く人形焼のお店には、日持ちする方としない方が売っていて、私はいつも日持ちしない方を買います。こちらの方が安いうえに、焼きたてで美味しいからです。若いころは、このてのお菓子をわざわざ自分で買うなんてことは考えられなかったものですが、48歳成人男性になった今では、むしろこういうお菓子の方が体に優しい気がして好きですね。

    帰りの電車は浅草から離れるインバウンドのお客さんでいっぱいでした。私の前にも、そんな雰囲気の家族が座っていて、奥さんは壁にもたれかかって眠っていて、年頃のお子さん2人はゲームで盛り上がっていました。お父さんは静かに周囲を眺めていましたが、その首からはライカのM10-Pが下がっていました。グリップ付き、レンズはキャップが付いていたからよくわからなかったけど、おそらく現行品のエルマリートM28mmだったと思います。だから何だというわけではないですが、仕事柄ちょっと気になり、じっと見してしまいました。

    この雑誌広告は1925年8月12日(水曜日)に発行された『The AMATEUR PHOTOGRAPHER』に掲載されたものです。ライカA型は1925年のライプツィヒ春季見本市で発表されたということですので、この雑誌広告はかなり初期のものと言えると思います。これを見て思うのは、最初っから外付け距離計があったのか!ということですね。内容は次の通りです。

    LEITZ DISTANCE METER
    The most accurate and convenient range finder for photography.
    Constructed on the principle of coincidence.
    By turning the milled head until a double image is merged into one,
    exact distances from 3 to 100 feet can be read on scale.
    A base plate is supplied for fixing on camera so that the meter can be instantly fitted or detached.Price, in well finished solid leather case, £2 – 0 – 0

    ライツ距離計
    写真撮影用として最も使いやすい距離計。二重像合致式の原理に基づいて製作されています。
    ローレット加工された調整ノブを回し、二重増が一つになったところで、
    3フィートから100フィートまでの正確な距離を目盛りから読み取ることができます。
    カメラに取り付けるためのベースプレートが付属しており、距離計は瞬時に着脱できます。
    価格(高級仕上げの本革ケース付き 2ポンド

    • The AMATEUR PHOTOGRAPHER(August 1925)
    • 浅草人形焼
  • THE NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE(December 1929)

    今日は「THE NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE(December 1929)」が届きました。先日届いた「Velhagen & Klasings Monatshefte(August 1933)」より4年ほど古い本になります。ライカは1925年に発表されたといわれていますので、ここにあるのは、かなり古い広告であるといっていいと思います。

    (広告左側より)
    Leica Cameras on the Graf Zeppelin Around the World
    (ライカ・カメラ、グラーフ・ツェッペリン号で世界一周)

    On the Graf Zeppelin’s west-bound trip one of the several Leica Cameras on board was used to photograph the interior of the torn bag. Motion prevented time exposures. The only light was that reflected from the ocean through the ripped opening, yet the pictures were remarkably clear.Several Leicas accompanied the Byrd Antarctic Expedition. Six more have been ordered by radio since the intrepid men reached their winter base.The Leica is known and used throughout the world by scientists, engineers and those who follow the advancement of photography.

    グラーフ・ツェッペリン号の西回り飛行において、船内に持ち込まれた数台のライカのうち1台が、引き裂かれた気嚢(外皮)の内部を撮影するために使用された。船体の揺れ(振動)のために長時間露光はできなかった。唯一の光源は、破れた開口部から差し込む海面の反射光だけであったが、それでも写真は驚くほど鮮明に写し出された。また数台のライカがバード南極探検隊に同行した。さらに探検隊が越冬基地へ到達した後、無線連絡によって6台が追加注文された。ライカは科学者、技術者、そして写真技術の発展に関心を持つ人々によって、世界中で知られ使用されている。

    (広告右側)
    Invariably part of the equipment of Explorers, Scientists and Experienced Travelers
    (探検家、科学者、そして経験豊かな旅行者たちの装備に欠かせない存在)

    There is no camera like the Leica, combining as it does quality, latitude of work, convenience and economy of operation.Takes 36 pictures on each loading.Uses standard cinema film and each negative is of double frame size—the first camera to have this feature.The smallest roll-film camera with focal-plane shutter.May be used for snapshots, portraits, indoors or out-side.Used by engineers for recording data and by scientists for photomicrographs.Always ready for instant use.Leica enlargements to 12” x 18”, or larger, preserve beauty and detail.Mechanically and optically the Leica is a model of perfection.See the Leica at your dealer’s.He will gladly demonstrate it for you.Or write for illustrated literature.

    E. Leitz, Inc., 60 East 10th St., New York, N. Y.

    ライカに匹敵するカメラはありません。優れた画質、携帯性、そして経済性を兼ね備えています。1本のフィルムで36枚撮影でき、標準シネフィルムを使用します。また1コマのサイズは通常の映画フィルムの2倍であり、この特徴を持つ最初のカメラでした。焦点面シャッターを備えたロールフィルムカメラとしては最小です。スナップ写真、肖像写真、室内撮影、屋外撮影に使用できます。技術者はデータ記録に、科学者は顕微鏡写真の撮影に利用しています。いつでも即座に撮影できる機動性を備えています。ライカの引き伸ばし写真は12×18インチ以上にもでき、美しさと細部を保持します。機械的にも光学的にも、ライカは完成されたモデルです。ぜひ販売店で実演をご覧ください。あるいは

    E. Leitz, Inc.
    60 East 10th Street
    New York, N.Y.

    僻地での撮影において、ライカが探検家、科学者、旅行者にとって必要不可欠な装備であることが、この文章からは読み取れます。しかし、この広告の面白さは、ライカそのものよりも大きく描かれたツェッペリン号にありそうです。大西洋横断や世界一周飛行などの歴史的偉業を成し遂げたツェッペリン号とあたかも比するかのようなデザインは、実際どうなの?という疑問を超えて、当時の読者にライカもまた「先端技術である」という印象を与えているように思えます。なお、本誌にはAutochromeによる美しいカラー写真が多数掲載されています。

    • THE NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE(December 1929)
    • THE NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE(December 1929)
    • THE NATIONAL GEOGRAPHIC MAGAZINE(December 1929)



  • Velhagen & Klasings Monatshefte(August 1933)

    ライカカタログの記録・資料化と並行して、往時の雑誌に掲載された広告の収集もしています。今日届いたのは「Velhagen & Klasings Monatshefte(August 1933)」です。表紙を開いて、1ページ目にライカの広告がありました。

    Ich hab’ sie bei mir — die Leica
    (私は持っている――ライカを)

    Für jede Situation ist sie gerüstet,
    allen Anforderungen gewachsen,
    und sie versagt nie. Was Ihnen unter-
    wegs an vielgestaltigen Eindrücken
    zufliegt, das halten Sie fest mit der
    immer schnappschußbereiten Leica.
    Ein wahres Wunderding ist die Leica
    Modell III mit ihrem umfassenden
    Zeitenbereich (1–1/500 Sekunde), ihrer
    automatischen Scharfeinstellung
    u. ihren universalen Zusatzgeräten.
    Fordern Sie unsere Druckschr. 1844

    あらゆる状況に備え、あらゆる要求に応え、決して期待を裏切りません。
    旅先で次々と目に飛び込んでくる多彩な印象を、いつでもスナップ撮影の準備ができているライカで記録してください。
    ライカIII型はまさに驚異的なカメラです。1秒から1/500秒までの広いシャッター速度範囲、自動距離調整、
    そして豊富な補助機器群を備えています。当社印刷物第1844号をご請求ください。

    旅先での出会いを写真に残したい。そのようなイメージなのでしょうか。ポケットに入る、フィルム一本で36枚撮れるといった機能面の説明は大幅に省かれ、わかりやすく「思い出」や「体験」の記録に重点が置かれているのが印象的です。

    ライカは古いカメラではあるのですが、2026年の現在でも普通に写真が撮れてしまうため、どれくらい古いのか?の実感が伴いにくいことがあります。また、雑誌の特集や本でライカの記事を読んでも、それらは現代のものであるため、過去を想像することは出来ても、その時代そのものを意識できるかというと、それは難しいのではと思います。そういう意味で、往時の雑誌そのものと、それに掲載された広告の力、現物の力は偉大だなぁというのが今日の気づきです。

    • Velhagen & Klasings Monatshefte(August 1933)
    • Velhagen & Klasings Monatshefte(August 1933)